知らない、ふたり

公園のサンスとソナ。背後には、ターザンロープ。小風がズンズンとロープを引っ張って画面上から消える。サンスとソナがいい感じで会話している最中にも、ロープがマイペースにたわんで左側に引っ張られていく。そして勢いよく画面上を滑っていく青柳文子演じる小風に観客は一目惚れするに違いない。

冒頭、「善意のいす」と書かれた青いベンチは強烈だ。日本語が母国語でない彼らはその意味を知ってか知らずか、そこで他人と関わり、出会ったりする。一瞬で恋に落ちたりもする。

ここにいる人たちはみんな、自分の右隣の人を好きになる。つまりはみんな右を向いていて、左側を向く人がいないから皆片思いだ。好きな人の好きな人が自分の隣にいる。そのことに気付かず、堂々めぐりで探し回る。

ソナのことが気になってしょうがないレオンが、こっそりソナが帰宅するまで毎日尾行する。レオンのことが気になってしょうがない小風が、そんなレオンを尾行する。可笑しな尾行の尾行が何日も続くことを淡々とカメラは映し出すが、変わらない日常に大きな変化が訪れるとき、サスペンスが生まれる。

終盤、彼らの恋物語も収束を迎えると思いきや。

他人が他人と出会って、好きになるってことは本当に、ややこしい。

0コメント

  • 1000 / 1000